本のひとりごと

読書記録

平成30年下半期 直木賞候補作を読む

ちょうど今日、今期の直木賞受賞作が発表される。

いつもは1、2冊、それも受賞作発表後に読んでいる候補作だけれど、今回は5作中4作を発表前に読むことができた。

 

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)

 

まずは、深緑野分さんの、「ベルリンは晴れているか」。

ちょうど戦時中のヨーロッパ、特にドイツを舞台とした作品に興味があり、読みまくっていたときに出会った一冊。

この作品は戦後混乱期のベルリンを舞台に、主人公の少女がサバイバル環境を強く生き抜いていく姿を描いたもの。

わたしには、主人公のキャラクターが少し弱く感じられて、なかなか読み進められなかったが、終盤になって衝撃の事実が明らかになったところから突然面白くなった。

 

 

熱帯

熱帯

 

森見登美彦さんの「熱帯」は、もう最初から引き込まれてしまい、あまりの面白さに一気読み。

誰も読み終えたことがない「熱帯」という本に取り憑かれていく読者たちを描いた物語。

マトリョーシカを思い出すような、お話の中のお話の中のお話の、そのまたその中のお話が出てきたり、舞台が変わってアナザーワールドへ連れ込まれ、またそこでもマトリョーシカが展開されたり。

これで変な終わり方だったら嫌だな、と要らない心配をしていたけれど、ラストも良かった。

 

 

信長の原理

信長の原理

 

垣根涼介さんの、「信長の原理」は、信長がパレートの法則に気がついていたら、という設定で展開される織田信長の生涯の物語。

視点人物がどんどん変わっていくのが、飽きずに読みやすかったが、最初から最後までパレートの法則が登場するのは、ややくどく感じた。

今までにない、信長の扱い方が新しく、歴史ものはあまり、、という方にも読みやすいと思う。

 

 

宝島

宝島

 

真藤順丈さんの「宝島」は、沖縄を舞台に戦後から本土返還までの約20年を、それぞれの人生を闘って生きた若者たちの物語。

「ベルリンは晴れているか」と同様、最後に突然感動がやってくるパターンだった。

プロローグに主人公たちの子ども時代の描写があれば、もっと感情移入しやすかったかもしれない。

 

 

今回の受賞作はどれになるか、見当も付かないけれど、私が一番好きなのは「熱帯」。

ほかの3作品も、どれが受賞してもおかしくないなと思う完成度。

唯一未読の「童の神」が受賞したりして…。

 

---追記---

受賞作は「宝島」に決定!

宝島という言葉は(たぶん)作品の中には出てこないのだけれど、宝=命、命どぅ宝(ぬちどぅたから)からなのかな?と勝手に解釈していた。

真藤順丈さんのほかの作品も読んでみたい。